畳む

 

畳、屏風、暖簾、着物、風呂敷、扇子、提灯…

私たちの暮らしをとりまいてきたモノたちは簡潔に畳み込まれ、縮小されてしまうものがどうしてこんなにもたくさんあるのでしょうか。そういえば、畳も本来、持ち運びや仕舞うことを前提に工夫された、いわばポータブルの床。しかし、このあやうい床は私たちのあらゆる生活を包み込み、自在に空間を変化させる道具。

そんな、畳の変幻自在の用の美を、調度や着物に込めたのもまして、その心のうちに「畳みおく」というゆかしい精神を宿したのも、私たちならではの精神文化「以心伝心」の心です。畳むとは、積み重ね、折り重ね、大切に仕舞うしぐさ。畳まれたモノや思いが簡潔であればあるほどそのエスプリはあらゆる場面で変幻自在にひろがりをみせるのです。