結ぶ
全能なるものへの期待
手で結ばれた飯を「おむすび」と呼びます。それは、食べやすいかたちになったというだけでなく、もっと精神的な郷愁を感じさせる食べ物です。“結ぶ”という言葉は、奈良時代、「むすひ」と清音で発音され、「むす」は、『産』『生』という意味を持ち、「ひ」は霊力を表す意味であったとか。
天地万物を産(む)しなす霊妙な神を「むすびの神」と呼んだいうことです。
「むすぶ」という言葉には、「契り」や「結実」、「完結」などという言葉になって完全なもの、揺るぎないものといった意味で今も私たちの暮らしに息づいています。男と女の「結び」は、完全でない者が一体となることで完成され、実を「結ぶ」とは、ことの完結を祝う時の言葉です。
今も私たちの暮らしの中で、祈りの心を表わす時、物と物を結び合わせる習慣が残っています。
“水引き”や“しめ縄”などがそうですし、おみくじなどを枝に結ぶのもこんな日本人の原像が残っているからなのかもしれません。